直行直帰が成り立つ条件:「来たか、いるか」をどう確認するか
警備会社が隊員を会社に集めてから現場に送るのは、全員が来たかを確かめ、装備と指示を渡し、点呼をするためです。直行直帰にすると、この確認を別の方法で行わなければなりません。確認が甘いと、現場に人が来ない、来たことを会社が知らない、という事故につながります。
私たちは、出勤・退勤をLINEのトーク上の打刻で受け取り、管制の画面に全員の到着状況が並ぶようにしています。開始時刻を過ぎて打刻がない隊員は画面上で目立つので、管制はその人に連絡し、必要なら待機している隊員を向かわせます。会社に集まらなくても「来たか、いるか」に記録で答えられる状態を作ることが、直行直帰の前提です。
装備は新任教育の時点で一式を渡し、消耗品は現場の近くや本社での受け取りにしています。隊員が会社に来るのは、新任教育・現任教育・装備の交換など年に数回程度です。
配置管理:欠員が出にくい仕組み
交通誘導警備の受注は「◯月◯日、◯名、資格者1名以上、夜勤」のように、日付・人数・資格要件・時間帯で決まります。私たちはこれを現場ごとに自社システムへ登録し、隊員の出勤可能日、保有資格、直近の勤務時間、現場までの距離を見ながら配置を組みます。
欠員が出たときに重要なのは、補充候補をどれだけ早く出せるかです。システムには、その日の出勤可能者のうち、資格要件を満たし、連続勤務や夜勤明けの制約に当たらない人が候補として並びます。管制は候補に順に連絡し、決まった時点で元請に報告します。前日夜や当日早朝の欠員に対応できるのは、この候補出しを人の記憶に頼っていないからです。
警備業法は、警備員名簿や教育記録、配置に関する書類の備え付けを警備業者に義務づけています。システムの記録はこの書類の元になるので、配置の記録を残すことは法令対応でもあります。
LINE出退勤と当日中の報告:発注者側のメリット
出退勤の打刻が時刻つきで残ることで、実働時間の集計が当日中に終わります。現場の報告(作業内容・気づき・ヒヤリハット・写真)も退勤の流れで記録し、必要に応じてお客様に当日中に共有します。「今日は何名が何時から何時までいて、何があったか」を、翌日ではなく当日に答えられます。
発注者である工事業者にとっては、欠員が出にくいこと、報告が当日中に届くこと、月末の請求と実働の突合がしやすいことがメリットです。元請の安全書類に警備員の情報が必要なときも、名簿・資格・教育記録を速やかに出せます。
働く側にとっては、紙の日報を書かなくてよいこと、タイムカードのために会社に寄らなくてよいこと、自分の勤務時間と日払い申請の履歴をスマホで確認できることが変わります。
- 発注者:欠員の補充が早い/報告が当日中に届く/実働の記録が残り請求の突合がしやすい
- 働く側:直行直帰で移動時間が減る/紙の日報・タイムカードがない/勤務と日払いの履歴をスマホで確認できる
日払いの法的な整理:賃金計算の単位と、支払いの運用は別
「日払い」という言葉は、2つの意味で使われます。一つは賃金を日単位で計算するという意味、もう一つは働いた当日に支払うという意味です。私たちの日払いは、日給制で日ごとに賃金を計算し、希望する人にはその日のうちに振り込む、という運用です。計算の単位と支払いのタイミングを分けて考えると、仕組みが理解しやすくなります。
労働基準法第24条は、賃金を通貨で、直接労働者に、全額を、毎月1回以上、一定の期日に支払うことを定めています。私たちは所定の給与日を定めたうえで、就業規則・賃金規程に日払い(希望者への賃金の前払い的な支払い)の制度を明記し、所定の給与日より前に支払う運用にしています。口座振込は、労働者本人の同意に基づいて行います。
振込手数料の本人負担と、寮に入る方の寮費の控除は、賃金から控除するものに当たるため、労働基準法第24条第1項ただし書に基づく労使協定(賃金控除に関する協定)と賃金規程に定めたうえで行っています。寮費は寮により異なり、日払いから控除する形です。「当日中に振り込む」のは会社の運用上の約束であり、法律が求める水準より手前で払っている、というのが正確な整理です。
日払い申請が当日中に振込になるまで
退勤の打刻をすると、その日の実働時間と日給がシステム上で計算されます。隊員がLINEから日払いを申請すると、申請は管制と経理の画面に届き、出勤・退勤の打刻と現場の報告が揃っていることを確認してから振込データを作ります。確認が取れた申請分を、金融機関の当日扱いの時間内にまとめて送金します。振込手数料は本人負担です。
この流れが当日中に終わるのは、出退勤・配置・報告・申請が一つのシステムの中にあり、申請のたびに紙や別の表を見比べなくてよいからです。人が確認するのは「打刻と報告が揃っているか」「金額が規程どおりか」の2点に絞っています。
一方で、制約もあります。打刻の漏れや報告の未提出があると確認で止まるので、申請の前に自分の打刻を見直してもらっています。金融機関の当日扱いの締め時刻を過ぎた申請は翌営業日の扱いになることも、入社時に説明しています。
なぜ自社で開発したのか、何を外に出さないのか
警備業向けの既製システムもありますが、私たちは配置・出退勤・報告・日払い申請を一つにつなぐ必要があり、隊員がLINEだけで完結する操作にしたかったため、自社で開発しました。社内で運用しながら直せるので、現場からの「この入力が面倒」という声を短い間隔で反映できます。
個人情報の扱いには線を引いています。出退勤の打刻は時刻と現場の記録であり、隊員の位置を常時追跡する仕組みではありません。報告の写真も、現場の状況を記録する目的に限り、顔が写るものは扱いを決めています。お客様に共有する情報は、現場の報告に必要な範囲に限っています。
仕組みはあくまで道具です。暑い日の休憩を増やすのも、欠員に走って向かうのも、最後は管制と隊員の判断です。システムは、その判断にかける時間を増やすためにあります。
よくあるご質問
Q.日払いを使うと、通常の給与より不利になることはありますか?
Q.LINEで出退勤を打刻すると、位置情報を常に見られるのですか?
Q.寮費はどのように引かれますか?
Q.工事業者として依頼する側ですが、報告はどのように受け取れますか?
この記事について
株式会社OU警備保障(熊本県公安委員会認定 第93000308号)が、警備業法・公表資料・自社の運用に基づいて執筆しています。料金・制度は変わることがあるため、最新の内容はお問い合わせ時にご確認ください。